2025.05.26(月) 大会レポート
武井壮と市原建彦 “ココペリ”の風に誓う再起のラウンド
アメリカから神戸へ、旧友の再結成
「プロとして、必ず同じティーに立つ。そのための今日は、予行演習なんです」
タレントであり、元陸上競技の日本王者でもある武井壮は、本気の眼差しで18ホールを歩いていた。
『スクランブルゴルフチャンピオンシップ in 神戸 2025』。パートナーを務めたのは、市原建彦。約25年前、アリゾナ州フェニックスで、武井と共に汗を流した旧友である。今回のチーム名「ココペリ」は、ふたりが原点とするそのコースの名に由来している。
「またいつか、彼と同じティーに立ちたい」。 その思いを胸に、武井は挑戦を続けてきた。ティーチングプロ試験を受け、年間15万球を打ち込む練習を重ね、シニアツアー出場も視野に入れる。「55歳までに、もう一度“山”を作って勝負する」。その言葉に迷いはない。
語り継がれる市原の衝撃
市原は、高校時代に『世界ジュニア』を制した逸材。そのポテンシャルは当時から“世界レベル”と評され、アダム・スコットを打ち負かしたエピソードも残っている。
ドライバーは軽く300ヤード超え、ウェッジはピンに絡み、パットも決める。大会ではビッグスコアを連発し、“ゴルフ界のモンスター”と称されるのも、決して大げさではなかった。
一方で、国内でのツアー優勝は1勝にとどまるが、現在は若手育成やゴルフの普及にも尽力し、自ら“ミニツアー”の運営も行っている。
結果は、3アンダー・69。34位という順位に、悔しさはあった。それでも、18番パー5で見せた池越え2オンは圧巻だった。市原のティーショットでポジションを作ると、武井はピンを狙ってフルスイング。風に押されながらも、打ち出された球は池のプレッシャーを乗り越えてグリーンを捉えた。
武井の現在地と、目標としてのプロ
試合後、武井は「不甲斐なかったけど、何個か見せ場は作れた」と、どこか晴れやかな表情で笑った。
そして、市原への想いを口にした。 「とんでもないゴルフをしていたのを目の前で見た。それがずっと印象に残っていて、僕の中では最強のゴルファーは市原建彦なんです。本当に強かった。だからこそ、もう一度その強さを取り戻してほしいし、ツアーに戻ってきてほしい。シニアでもいい。いつか、僕もプロとして彼と同じフィールドに立つことが、ゴルフ人生の目標なんです」
その一言には、市原への変わらぬ敬意と、自らの目標に向けた静かな決意が込められていた。
スクランブルがくれた確かな一歩
一方、市原もこのフォーマットの面白さに目を輝かせた。「スクランブルの競技は初めてだったけど、本当に面白いし、いい経験だった。プロアマではよくある形式だけど、こうして本格的な競技として行われる機会は少ない」。
そしてなにより、旧友と同じ目線でプレーを共にできたことが、何よりの喜びだった。「あの頃から、武井さんと切磋琢磨していましたから。またこうして組めたのはうれしかった」。
チーム“ココペリ”の挑戦は、まだ始まったばかりだ。ふたりの物語は次なるフィールドへと進んでいく。
この記事を書いた人
MORIYA KIYOSHI
1974年|埼玉県生まれ|【経歴】JLPGA → Golf Life(株) 新規事業推進室 →いま Forever Golf 株式会社 代表/ Creative Producer| いつまでも豊かなライフスタイルを。ゴルフで笑顔が生まれる体験をプロデュースしています。