2025.05.23(金) 大会レポート
“楽しかった”と“きつかった”の間に――“チーム今野家”のスクランブル
「こうやって試合で一緒に回ることは、そう滅多にない。すごく楽しかったですよ」
ラウンド後、今野康晴はそう語り、甥・今野大喜の顔を見てにこやかにうなずいた。
2025年4月9日、『スクランブルゴルフチャンピオンシップ in 神戸 2025』
ベテランと若手。そして、叔父と甥――血のつながりだけでは語れない、確かな絆がそこにはあった。
ふたりで戦うということ
ツアーでは同じ組で回ることもあったというふたりだが、この日はまったく別の景色だった。「個人競技とチーム戦では、全然雰囲気が違う」康晴がそう語れば、大喜も小さくうなずく。
同じDNAを持ちながら、プレースタイルはまるで対照的。「そこが逆にいい方向に噛み合った」という大喜の言葉どおり、それぞれの強みを自然に引き出し合いながら、ホールを重ねていった。
もっとも、序盤から順調だったわけではない。 ダブルス戦には、ひとりのティショットを最低7回採用しなければならないというルールがある。
飛距離に優れる大喜のショットは常に40ヤードほど前にあり、当然バーディーチャンスにもつながりやすい。できるだけ多く使いたい――そう思っていても、その“7回の制限”が判断を難しくしていた。
「そりゃバーディーが取りやすいのは大喜のボール。でも、ルールがあるから、きついなーと思いながら回ってました」と笑いながら振り返る。さらに、「せっかく大喜のボールを選んでもバーディーが取れなかったりすると、なおさらきつかったですね」と、少し苦笑いを交えて続けた。
前半は思ったほどスコアが伸びず、やや重たい展開となった。それでも5アンダーで折り返すと、後半は少しずつ呼吸が合い始める。タイプの異なるふたりのプレーが、リズムよくスコアに結びついていった。
イーグルとともに刻んだ記憶
そして迎えた最終18番パー5。この日のハイライトとなる劇的な締めくくりだった。 大喜のティショットは、しっかりとフェアウェイを捉えた。ピンまで残り160ヤード。先に康晴が放ったセカンドショットは、ピン奥4メートルにピタリとつけるナイスオン。
続く大喜は「狙います」と宣言して打ったが、わずかにショート。ボールはグリーン手前の池に沈んだ。
一瞬の静けさのなか、18番グリーンには淡い期待感が漂っていた。康晴はゆっくりとパターを構え、そして迷いなく、その4メートルを沈めた――イーグルフィニッシュ。
「ダブルスのいいところを活かすことができました」 大喜はそう笑いながら話した。 少し照れくさそうなその表情が、すべてを物語っていた。
「こういう大会って、すごく面白いです」スクランブル形式のプロ大会について、康晴は語る。「アマチュアの大会ではよく耳にするけど、プロ同士でこういうのは本当に少ない。本当に楽しかったです」 ラウンドの充実感と、ふたりの関係性が自然に伝わる言葉だった。
この日のスコアは、12アンダー、60ストローク。攻める若さと、支える経験。優勝こそ逃したものの、異なるスタイルが噛み合った18ホールは、きっとこの先も、ふたりの記憶に残るはずだ。
この記事を書いた人
MORIYA KIYOSHI
1974年|埼玉県生まれ|【経歴】JLPGA → Golf Life(株) 新規事業推進室 →いま Forever Golf 株式会社 代表/ Creative Producer| いつまでも豊かなライフスタイルを。ゴルフで笑顔が生まれる体験をプロデュースしています。